◆あらすじ◆

 

江戸開成所の女塾生・三条 英(さんじょう はなぶさ) には、ある確固たる思想があった。

 

『人間はすべて凡人と非凡人との二つの範疇に分かたれ、

非凡人はその行動によって歴史に新しい時代をもたらす。

そして、それによって人類の幸福に貢献するのだから、

既成の道徳法律を踏み越える権利がある。』

 

その思想に突き動かされ、英はかねてよりの計画通り、金貸しの老婆殺害を実行に移してしまうが、

偶然そこに居合わせた老婆の妹までも手にかけてしまう。

この予定外の殺人が、英の思想を揺さぶり、心に重い石を抱かせてしまう。

殺人事件の担当捜査官・都 司之助(みやこ つかさのすけ)は、

事件の確信犯的な性質を見抜き、次第に英に対して疑惑の目を向け始めた。

それに気づいた英は、都の仕掛ける執拗な心理戦を懸命にしのごうとする。

一方、英の親友・才谷 梅太郎(さいたに うめたろう) は、罪の意識に苛まれ苦しむ英の異変に気づき、

 

その身を案ずるが、才谷もまた、同時代の、より大きな歴史的事件の渦中にいたのだった。

 

1867年夏。

時あたかも尊王倒幕の機運高まる幕末の真っ只中、「ええじゃないか」踊りが江戸市中を埋め尽くす。

新しい時代を目前に、無血革命を目指す、坂本竜馬。

竜馬の密通を疑い、武装蜂起を煽る志士たち。

そして、彼らの背後では、ニヒリスト溜水 石右衛門(たまりみず いしえもん) が暗躍する。

 

果たして、目的は手段を浄化するのか?!

永遠の命題が甦る革命前夜、

ついに三条 英が心のうちを語り始める・・・・・!